2017-01-01から1年間の記事一覧

なりそこねた小説 八

滅裂な離陸と飛翔そして不時着。決して目的地には辿り着かない。そもそも目的地をもたない旅である。モード、コード、トーン、キャラクター、スタイル、マナー……僕らを縛りつけているカタカナの雑菌から逃れるために電子の森に僕は少しずつ思想を散布してい…

なりそこねた小説 七

真っ赤な花が咲きました。いっぱいいっぱい目の前にいっぱいの赤色が秋風に揺れています。鋏をもったお嬢さんが鼻歌交じりに花の咲き乱れる畦道を歩いていきます。 「どれにしようかな天の神様のいうとおり」 夕日でギラつく鋏を無邪気にお嬢さんは振り回し…

なりそこねた小説 六

逃げ続けたらついに逃げ場所がなくなった。逃げる以外の生き方を知らないので屍のように生きている。他人は僕がまともになったと褒めてくれている。 _______ 「決してその話を誰にもしてはいけないよ。きっと良くないことが起こるからね」 「でも今あ…

なりそこねた小説 五

うっかりしたことに神様はその日予定よりもひとり多くの人を創ってしまわれました。ひとりくらいかまわないじゃないか、と思われるかもしれませんが、困ったことに魂の材料は不足がちなのです。特にその日は余裕がありませんでした。仕方がないので神様は魂…

なりそこねた小説 四

血を抜いたら思った以上に黒かったことが印象的でした。なるほど血を失うと白くなるのもうなずける。そう思いました。血を浴びた人間は洗い流せないほど黒くなるのだと思いました。そう思いました。 _______ 酒を飲んでいないのに意識が朦朧としたの…

なりそこねた小説 参

お題「紅葉」 なんでもできる気がしていた。実際になんでもできた。今はできない。だから証明のしようがない。 ーーーーーーーー 拝啓。寒くなり始めると紅葉が綺麗になりますね。先祖代々の山も綺麗に染まるはずでした。今はソーラーパネルでギラギラと光り…

なりそこねた小説 弐

クリスマス。雪のないクリスマス。恋人のいないクリスマス。金のないクリスマス。どれがないのが最も悲しいのだろうか考えていたら時間がなくなっていた。あ、タクシー。 ーーーーーーー 盗賊の五郎兵衛は仲間の裏切りにあって鵜殿の河原で首を落とされると…