なりそこねた小説 七
真っ赤な花が咲きました。いっぱいいっぱい目の前にいっぱいの赤色が秋風に揺れています。鋏をもったお嬢さんが鼻歌交じりに花の咲き乱れる畦道を歩いていきます。
「どれにしようかな天の神様のいうとおり」
夕日でギラつく鋏を無邪気にお嬢さんは振り回しておりました。花は何も申しません。
「お猿のおしりはまっかっか」
お嬢さんは夕月に向かってジョキンと鋏を鳴らしました。その日は満月でした。お嬢さんは満足して帰っていきました。花はひとつも狩られませんでした。
「てんごく、じごく、おおじごく」
姿は見えなくなりましたがお嬢さんの歌はまだどこかで響いています。満月はもう既に輝いています。
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「面白いこと言ってよ」
「お前こそ言えよ」
「なんだよ」
「なんだよってなんだよ」
「やるってんのか」
「ぶっ殺すぞてめえ」
「まあまあ喧嘩はよしましょう」
「なんだよ」
「まあまあ、ほら、みんな見てますよ」
と仲裁に入った男と私は目が合いましたので厄介に巻き込まれないためにそそくさと立ち去りました。そして私は皆さんにひとつ隠し事をしています。
「私は今朝、死んでいるんですよ」
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気に入った服を手に取って買いもしないのに眺めることに日本語の名前をつけてあげましょう。そうですね、買い譲り、なんてどうですか。もっと熟語っぽいものがお好みですか、そうですか。では、無縁迷惑、とか。はは、まるでセンスないですね。でも虚しい営みに名前をつける戯れを楽しむためにはセンスが要りますよ。それはまるで生まれない子供を育むみたいな。
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短歌『パーティーで汚れちまった思い出はまた来年もポッケの中に』