なりそこねた小説 参

お題「紅葉」

 

なんでもできる気がしていた。実際になんでもできた。今はできない。だから証明のしようがない。

 

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拝啓。寒くなり始めると紅葉が綺麗になりますね。先祖代々の山も綺麗に染まるはずでした。今はソーラーパネルでギラギラと光り輝いていますよ。相続したら大事にするなんて真っ赤な嘘。紅葉みたいに。敬具。

 

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ジャックは紅葉のなかに生み捨てられていた仔犬だった。人が捨てたのではない。母犬が捨てたのだ。毛が一本も生えていない無垢な肉体は紅葉の赤さに反比例して冷めた色に変わっていく。冷たくなった。後日、近所の掃除を日課にしている老人が彼を見つけてジャックと名付け庭に埋めたらしい。

 

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なんでもいいからお題をくれ。即座に応えて見せるから。紅葉?けっこう、けっこう。雪の降らない都会の明るいクリスマスにパソコンウィンドウのなかだけで輝く紅葉。目を閉じれば紅葉が見える。血管だった。紅葉、紅葉。

 

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短歌『もしかして知り合いかもって教えられた紅葉のころに忘れた名前』